例えば会話をしながら歩く親子、父、母そして息子。例えば影絵のような親子。無音で上がる無機質な都会のビルのエレベーター。3人の前には螺旋階段がある。やがて階段を降りる3人、会話は途切れないが声は少しづつ小さくなりやがて無音になる。カメラは親子を追わず螺旋階段を映し続ける、グレン・グールドの奏でるバッハとっても緊張感のある平均律のバッハ。是枝監督の作品は心情表現をこうしたなにげない静物のカットを入れながら見事にとても手際良く見せてくれる。昨今の日本映画はなにかと説明過多で凡庸な画作りと興醒めする物が多いいのだが本作はそんな日本映画界における1つの光である。ミスマッチではないかと思われた福山雅治のキャスティングも前半で不安を一気に払いのけてくれた。やはり演者はよき演出家に恵まれるべきだと思わせる最高のキャスティング。胸が痛くなりそして緊張しほどよい緩和のある本作。良い物観た。またあの家族に会いたい。
ピース
NHKで放送されたプロフェッショナル仕事の流儀藤子・F・不二雄の回を観た。これはまんが道のF先生視点的切り口。もっともっと先生の話をお顔を観て声を聞きたいと思った。個人的な話だが、F先生が通っていたピースという新宿の喫茶店、サラリーマンの頃ちょいちょい寄り道で使っていた。先生はそこで驚異的なスピードでドラえもんネームを書いていたらしい、そして僕はそこでただ仕事をさぼっていた。こういう形で胸が痛くなるとは思わなかった。時は過ぎ行くもので小学館の本社社屋は取り壊されるらしい。空想のなかでねじれた場所を思い、なにか取り戻さないといけないと柄にも無く痛切に感じた。
藤子・F・不二雄(2013年10月21日放送)| これまでの放送 | NHK プロフェッショナル 仕事の流儀
- 作者: 藤子・F・不二雄
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Le Mépris
軽蔑Le Mépris。観るのに集中力がいるので避けていたのですが、そうも言ってられないなと思い鑑賞。観賞後少し考える。冒頭でナレーションされる「映画とは欲望が作る世界の視覚化である。」に立ち返りなるほどと解ったふりをする。
メタ化された映画の中の映画で紡がれる対立項に潜む欲望に伴う軽蔑を説明なしに執拗に表現する様は常軌を逸しているのではと思うほど辛辣なまでの批判精神に満ちあふれている。それはわかるがめくるめく切り替わるカットバックや古典の引用にやっぱり正直戸惑うのだ。
ビビッドなカラーのバスローブをまとい時に美しい肢体を露にしながら演技するブリジット・バルドーでさえそんなゴダールの執着にやけに乾いて見えてしまう所は実は最高の見所かもしれない。全てはカプリ島から臨む真っ青な地中海の海にただのみ込まれて行くそんな映画でした。
個人的には好きなタイプの映画ですが悦に入ってお勧めしたりはしないです。
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アドリアーナ・マシエル
歌姫って単語が妙に薄っぺらい表現になって久しいですが。午後のおやつの時間にブラジルの歌姫アドリアーナ・マシエルの歌うLife on marsを聴いています。非常に知的で可憐で美しいボサノヴァアレンジです。
- アーティスト: Adriana Maciel
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More than a feeling
初球だった。鋭いスイングとともにボールは美しい軌道を描いて右中間スタンドにあっという間に吸い込まれた。凄い試合だった。たぶんフェンウェイ・パークではこいつがかかったに違いない!!More than a feeling!!
Killing Them Softly邦題ジャッキー・コーガン
Killing Them Softly邦題ジャッキー・コーガンを観た。予告で予想していた展開とは違い随分社会派のノワール作品でした。現代のアメリカ社会を賭博場でおこる事件とリンクさせていく手法はある意味アルトマンのナッシュビルの選挙運動を連想したのですが本作は少し語らせすぎかな?と個人的には思いました。下品極まりない会話や、やけにリアリズム的な暴力シーンもありだれもが楽しめる作品ではないですが現代アメリカの社会学等に興味がある方にはなかなか痛切なニヒリズムとして受け止められるきらりと光る佳作なのではないでしょうか?
一定の満足はしているのだけど問題はブラッドピットが問答無用にかっこ良すぎる点なのかもしれない。かっこ良ければいいじゃんって映画の鑑賞スタイルもある。あるしそういう鑑賞の仕方も嫌いでないが、そうでない映画の見方もある。葛藤もある。