テキスト

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そして父になる

例えば会話をしながら歩く親子、父、母そして息子。例えば影絵のような親子。無音で上がる無機質な都会のビルのエレベーター。3人の前には螺旋階段がある。やがて階段を降りる3人、会話は途切れないが声は少しづつ小さくなりやがて無音になる。カメラは親子を追わず螺旋階段を映し続ける、グレン・グールドの奏でるバッハとっても緊張感のある平均律のバッハ。是枝監督の作品は心情表現をこうしたなにげない静物のカットを入れながら見事にとても手際良く見せてくれる。昨今の日本映画はなにかと説明過多で凡庸な画作りと興醒めする物が多いいのだが本作はそんな日本映画界における1つの光である。ミスマッチではないかと思われた福山雅治のキャスティングも前半で不安を一気に払いのけてくれた。やはり演者はよき演出家に恵まれるべきだと思わせる最高のキャスティング。胸が痛くなりそして緊張しほどよい緩和のある本作。良い物観た。またあの家族に会いたい。